3.セント

第2章で、音程は2音の振動数比で決まることを説明しましたが、
正しい振動数からのズレの度合いも、振動数比で決まります。

つまり、
正しい振動数 440Hz に対して 444Hz は、約1.01倍の振動数です。
同じ 4Hz の差でも、880Hz に対して 884Hz では、約1.005 倍なので、
ズレは、前者の方が大きいのです。
同じだけズレるには、888Hz でなければいけません。

このように、音がどれだけズレているかを、振動数差で表すのは、元になる
音の振動数により変わるので、大変難しいです。
単に「4Hz 高い」というのは、音程の世界では通用せず
「その音は、440Hz の音に対して、4Hz 高い」
「その音は、660Hz の音に対して、10Hz 高い」
と言わないと、正しい音程のズレは表現できず、また、このように表現できても
では、どのくらいズレているのかわかりにくいです。

そもそも、音程は振動数比で決まるので、そこに、振動数差を持ち込むのには
無理があります。

そこで、定義通り
「その音は、正しい音の1.003倍」とか「0.995倍」とかいう表現をすれば、
とりあえず、元になる音を考える必要はなくなります。
しかし、2倍が1オクターブというのはわかりますが、その間の音(半音など)
について、どのくらいズレているかはわかりにくいです。

そこで、
 c=1200×log2(振動数比)
で定義した数値を考えます。

1オクターブの振動数比は2ですから、cの値は
 c=1200×log22=1200
平均律の半音の振動数比は、21/12 なので、cの値は
 c=1200×log21/12=1200×(1/12)=100
平均律の全音の振動数比は、21/12×21/12=21/6 なので、cの値は
 c=1200×log21/6=1200×(1/6)=200
以下、半音上がるごとに、cの値は、100ずつ増えます。

この値に、セントという単位を付けて2音の音程を、等差数列的に表現できます。
半音が100セントというのは、単なる決めごとです。10だと小数が必要で、1000だと、1セントが
ほとんど意味をなさないほど細かくなってしまうので、ちょうど良いというところでしょう。

平均律の半音は100セント

最近のチューナーは、基準の音(A音=440Hz など)を設定したら、それを基準とした
各音の振動数(C音なら523Hz) に対して、何セント低い、または高いという表示をするように
なっています。
ある音の基準より、50セント高い音は、その半音上の音より、50セント低い音なので、
チューナーは、±50 までしか目盛りが必要ありません。(ただし、クロマチックチューナーの場合)


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