7.トロンボーンのポジション
ここでの解説は、完全に理論上の音が出ることを想定しています。
実際は、いろんな要因により、音程は振れますので、この通りになるとは限りません。
トロンボーンに限らず、管楽器は、理論上は純正律の倍音が出ます。
例えば、トロンボーンの第1ポジションでB♭音(実音)を、A=440Hz 基準で合わせたとすると、
同じ第1ポジションで出る、D音は、-13.7セントになり、平均律でのD音は、それ以上管を縮められないので、
理論上は出ないことになります。
(このため、通常、トロンボーンは、第1ポジションより2cmくらい抜いてチューニングすると言われています。
実際の演奏時に、第1ポジションをピッタリ0mmにすることが困難なためという理由もあるようです。)
そうすると、D音の半音下のD♭音を出すための第2ポジションは、第1ポジションのD音がすでに
低めなので、B♭音の半音下のA音を出すための第2ポジションより、高い位置(抜く量が少ない)
にしないといけません。
ここでは、各倍音での、第1ポジションから第7ポジションまでの理論的な抜く長さを計算します。
ただし、こちらのページで萩谷克己氏が
「トロンボーンの7ポジションは物理的にはほとんど足りないのです。ですから下のHは口で少し下げながら吹かないと高くなります」
と答えているように、実際に7ポジションを60cmも抜くと、ほとんど抜け落ちますし、F管の6ポジションで65cm抜くのは不可能です。
あくまでも、理論的な数値として考えてください。
また、実際のトロンボーンの管長は約270cmですが、理論値はこれよりも長くなります。これは、トロンボーンに限らず、
(金)管楽器では、管の端と端ちょうどで定常波が形成されるわけではなく、少し空気中に離れたところに、波の節が出来ます。
このため、(金)管楽器は、容易に音程を変えることが出来、その分、よく外れるのです。
音速を 340m/s とします。
B♭管のトロンボーンの場合、A音(55Hz) の半音上のB♭音(58.270Hz)が、基音(いわゆるペダルトーン)と
なるので、理論上の管長は
340÷58.270÷2=2.917(m)
となります。
第1ポジションが、B♭に合っているとして、半音下のA音を出すためには、管長を 21/12=1.05946309 倍にする必要があります。
2.917×21/12=3.091(m)
となり、3.091−2.917=0.173(m) 長くする必要があります。
スライドを1cm抜くと、管全体は2cm 長くなるので、
173÷2≒87(mm)
抜いた位置が第2ポジションとなります。
このようにして、各倍音のポジションを求めると、以下のようになります。
ポジション | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 |
B♭ | 0 | 86.7 | 178.6 | 276.0 | 379.2 | 488.4 | 604.2 |
D | -11.5 | 74.6 | 165.7 | 262.3 | 364.7 | 473.1 | 588.0 |
F | 1.6 | 88.5 | 180.5 | 278.0 | 381.2 | 490.6 | 606.6 |
A♭ | -26.0 | 59.2 | 149.4 | 245.0 | 346.4 | 453.7 | 567.4 |
C | 3.3 | 90.2 | 182.3 | 279.9 | 383.3 | 492.8 | 608.9 |
E | -40.4 | 43.9 | 133.2 | 227.9 | 328.2 | 434.4 | 547.0 |
ポジション | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 |
F | 0 | 115.9 | 238.5 | 368.4 | 506.1 | 652.0 |
A | -15.3 | 99.5 | 221.2 | 350.2 | 486.8 | 631.5 |
C | 2.2 | 118.1 | 240.9 | 371.0 | 508.9 | 654.9 |
E♭ | -34.7 | 79.0 | 199.4 | 327.1 | 462.3 | 605.6 |
G | 4.4 | 120.4 | 243.4 | 373.7 | 511.7 | 657.9 |
B | -54.0 | 58.6 | 177.8 | 304.2 | 438.1 | 579.9 |