4章 ベクトル 1節 ベクトルとその演算
※太字の英文字(ABa)はベクトル()を表します。

 平面上の動点がAから出発してBまで移動することは、右の図のように、線分ABに矢印を書きたしたもので表される。このように矢印によって向きを指定された線分を有向線分とよび、A をその始点、B をその終点という。
 BからAへの移動は、右の図のように、上の図と逆向きの矢印のついた有向線分で表される。
 平面上の有向線分ABの向きと長さだけを考え、その位置を無視したとき、それを平面上のベクトルまたは単にベクトルといい、ABで表す。
 そして、線分ABの長さをベクトルABの大きさといい、|AB|で表す。すなわち
   |AB|=AB
 ベクトルはその大きさと向きによって定まるから、ABCD等しいということは、それらの大きさと向きが一致することである。
 ABCDが等しいとき
   ABCD
と書く。
 また、右の図からわかるように、
   ABCD
ならば、有向線分CDを平行に移動して、有向線分ABと重ね合わせることができる。逆にこれができれば、ABCDである。
 ベクトルを
   AB、 CD
のように、文字などで表す。
 ABBAは大きさは同じであるが向きが反対である。このように と大きさは同じで、向きが反対のベクトルを の逆ベクトルといい、− で表す。したがって
   −ABBA
である。
ベクトルの加法
  に等しいベクトルをAB に等しいベクトルをBCとする。このとき、ベクトル AC の和と定義し
  
と書く。
 この定義は、始点Aのとり方に関係しない。
零ベクトル
AAは”向きをつけた線分”ではないが、これを大きさ0で任意の向きをもつベクトルと考え、0 で表す。0零ベクトルという。
(1) 零ベクトルの大きさは |0|=0
(2) 零ベクトルの向きは任意
(3) +(-a)=0
(4) 0
ベクトルの加法に対して、次の基本性質が成り立つ。
 (1)   (交換法則)
 (2) ()++()  (結合法則)
)+ または +() は、かっこを省略して と書くことができる。
ベクトルの減法
 2つのベクトル に対して
  
を満たすベクトル
  
と表し、 から を引いたという。
ベクトルの実数倍
ベクトル と実数 m の積 m は次のようなベクトルである。
(i)  でないとき
  (1) m>0 ならば、m と同じ向きで大きさが m|| に等しいベクトル
  (2) m<0 ならば、m と反対の向きで大きさが |m||| に等しいベクトル
  (3) m=0 ならば、m は零ベクトル
(ii)  のとき m は零ベクトル
ベクトルの平行
 いずれも零ベクトルでない2つのベクトル が、同じ向きまたは反対の向きをもつとき、 は互いに平行であるといい、// と書く。
 、  のとき
   a=m ←→ //
ベクトルの実数倍について、次の基本性質が成り立つ
 (1) (mn)=m(n)   (結合法則)
 (2) (m+n)=m+n   (分配法則I)
 (3) m()=m+m   (分配法則II)
(mn) または m(n) はかっこを省略して mn と書ける。
ベクトルの成分
 平面ベクトルPQが与えられたとき、PQのx軸への正射影をAB、y軸への正射影をCDとすれば、図からわかるように
  PQABCD ・・・・・・(1)
である。この ABCD をそれぞれx軸方向、y軸方向のPQの成分ベクトルという。
 平面上の任意のベクトルはその成分ベクトルの和として表される。

 大きさ1のベクトルを単位ベクトルという。
 特に、x軸の正の向きと同じ向きをもつ単位ベクトルを で表し、x軸方向の基本ベクトルという。
 同様にして、y軸方向の基本ベクトルを考え、これを で表す。
 (1) において、PQの成分ベクトルは、それぞれ に平行であるから、それらの実数倍として表される。
  AB=m、  CD=n
とすれば、m、n はそれぞれOEOFに関するPQの成分であって、次のように表せる。
  PQ=m+n  (PQの基本ベクトル表示)
このとき、mをPQx成分、nをPQy成分という。
ベクトルは、そのx成分とy成分とによって定められる。
上図から、明らかに
   
ベクトルの成分と座票差
 点P,Qの座標をそれぞれ (x、y)、(x'、y') とする。
 PQのx成分m、y成分n は次の式で求められる。
   m=x'−x、   n=y'−y
このとき、
   
=m+n であるとき、ベクトル を簡単にベクトル(m,n)とも書く。すなわち
   =(m,n)
この書き方をベクトル の直交軸Oxy に関する成分表示という。
成分による演算
(1) (a1,a2)+(b1,b2)=(a1+b1,a2+b2
(2) (a1,a2)−(b1,b2)=(a1−b1,a2−b2
(3) k(a1,a2)=(ka1,ka2

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